• もし工場長が企業経営者になったら 第6回

もし工場長が企業経営者になったら

第6回 財務に対する客観視(5)-会社が儲かっているか?2-

P&A グラントソントン 伏見将一

工場長からフィリピン法人社長に就任した場合、会計や税務の知識が不足していたとしても、経営者になったからには経営全般に対して責任を負い、自社の客観視を行う必要がある。客観視のためには財務報告内容の把握が必須である。またフィリピン法人の経営者は、フィリピン法人の事業の責任を負っているとともに、その事業の結果を親会社に財務報告として説明する必要がある。

 

会社が儲かるとは?―あなたの会社の収益性を把握する(前回の振り返り)

フィリピン法人の経営者は、会社が儲かるように経営していくことが求められている。「あなたの会社がどれだけ儲かっているのか?(収益性)」を客観的に把握することで、貴社が進むべき経営の方向性が見えてくる。収益性を把握するためには、どれだけ「投資したお金」を使って、どれだけ「リターン」を生み出しているのかを計算する。会社の投資金額は、「貸借対照表の総資産(左側にある資産金額の総合計)」、リターンは、「損益計算書の利益額(税引前当期純利益)の金額にあたる。リターン(利益額)を投資金額(総資産)で割れば、収益性が明らかになる。この計算から得られた比率を総資産利益率(ROA)という。

ROA formula for #6

収益性が高いとは、できるだけ小さな投資金額(総資産)で、大きなリターン(利益)を得ることであり、総資産利益率の数値が高ければ収益性が高いことを示す。

あなたの会社の総資産利益率はいくらであるか?たとえば、計算した結果、あなたの会社の総資産利益率が2%だったとしたら、それは他の企業に比べて低いのか、それとも高いのであろうか。

 

総資産利益率2%は高い?低い? ―収益性を判断するための指標

前回、総資産利益率の目標は10%とお話したが、多くの企業で達成が難しいのが実情である。総資本利益率の日本での全業種平均は3%程度、製造業では4%程度、非製造業で2.5%程度となっている。

ただし、企業が保有する固定資産や、企業の業種によっても数値が変動するため一概に平均的な数値というものはない。また、企業の規模によっても大きく変動し上場企業と中小企業、少人数で運営する小規模企業では、この数値の目安も大きく異なる。

経営者は、あなたの会社の業界平均および規模の近い競合他社の数値を確認し、さらにあなたの会社のこれまでの総資産利益率の変遷を把握することで、自社の収益性について理解し、そこから得られた考察を経営意思決定にいかすことが求められる。

なお、自社の収益性について理解するために情報がたりない場合は、提携先の会計事務所等から情報を得てほしい。 

 

事例)規模を拡大する甲社 vs 一定規模を維持する乙社

日系企業フィリピン法人である甲社と乙社。財政状態は下記の通りである。この甲社と乙社、どちらが儲かっているということができるのか、一緒に考えていきたい。甲社は、毎年、堅実に利益を出して、儲かったお金は新規の設備投資にまわし、現在では、取り扱う製品の種類も増え、規模を拡大している。一方、乙社はニッチな製品を扱っていて、売上は伸びないが、付加価値の高い製品に注力している。毎年儲かったお金は親会社に対して配当を行い、一定の規模を保っている。

comparison of two companies IS BS

前述の総資産利益率に当てはめて考えてみてほしい。甲社の投資したお金(貸借対照表の資産)は100億円、リターン(損益計算書の利益)は5億円、リターンを投資したお金で割った総資産利益率は5%となる。一方、乙社の投資したお金(貸借対照表の資産)は50億円、リターン(損益計算書の利益)は5億円、リターンを投資したお金で割った総資産利益率は10%となる。

計算された総資産利益率を比較すると、甲社の総資産利益率が5%、乙社の総資産利益率が10%。よって、当年度の数値からは乙社の方が儲かっていると言える。

アメリカ・ドイツと比べて日本の製造業の総資産利益率は低い?

一般的にアメリカ、ドイツと比べて日本の製造業の総資産利益率は低い。その原因を分析するために、総資産利益率の公式を、さらに分解してみよう。下記の通り、総資産利益率は、分母と分子に同じ【売上高】を乗じることにより、総資産回転率と売上高利益率に分解できる。

breakdown of ROA formula

総資産利益率を上げるには、できるだけ小さな総資産で、大きな利益を上げることである。これを分解すると、下記の通りとなる。

  • 総資産回転率を上げる(できるだけ小さな総資産で大きな売上高を上げる)
  • 売上高利益率を上げる(できるだけ小さな売上高で大きな利益を上げる)

それでは、「総資産回転率」と「売上高利益率」という点で、日本とアメリカ・ドイツを比較するとどうなるか。調べてみると、一般的に、日本の総資産回転率はアメリカ、ドイツと同程度にある一方、売上高利益率は低いようである。

なぜ日系企業の売上高利益率が低いのか?また、その要因を踏まえて、フィリピン法人の経営をどのように改善させていくべきか、次回、一緒に考えていきたい。

→ 次号

 

伏見 将一(ふしみ しょういち) P&A グラントソントン Japan Desk Director 公認会計士(日本)

2005年に太陽有限責任監査法人入所。上場企業及び外資企業に対する法定監査業務、財務デューデリジェンス業務や上場支援業務等に従事。また、軍師アカデミー会員として中小企業コンサルの経験を有する。2013年よりフィリピンTOP4の会計事務所であるP&Aグラントソントンに出向。日本の会計・税務との相違に基づいたフィリピンの複雑な会計・税務に関する実務的なアドバイス等、日本人経営者および日系企業の多様なニーズに対応したサービスを提供している。

P&A グラントソントンJapan Desk:約170社のフィリピン日系企業に対して、監査、税務、アウトソーシング、会社設立、アドバイザリー等会計全般サービスを日本人4名体制で提供している。

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